2017年3/4
ケーディーハポン
ピーターフォーク「ヤキモキ」発売記念ヤキモキエブリデイ
出演者はテトペッテンソン、フレンドリーハーツオブジャパン、百景借景、そしてピーターフォーク。いま演奏中。
あと二曲で終わります、とギターの人が言ったあと、バチを置いたカーリーさんは立ち上がり、ピアノの方へ歩いて言った。
私自身は、もう、帰ろうかなとすこし悩んでいる。ライブに来ていること自体が不思議だった。今朝はいつもより遅く朝は起きたし、今期は見なきゃいけないドラマがあった。
それでも、多分ここにいるのは、
アヤからの結婚報告のメールを見たからだと思う。
アヤは結婚する。
アヤは私の大学時代の友達で、初めての出会ったのはポルナレフポート(通称ポルポト)のレコ発だった。
ポルポトは当時はポストロック、シューゲイザーと言われたバンドで、(当時はパソコンを使えば私の周りではポストロックと言われてた)、音楽にハマってた就活中の私もついつい通ってしまっていた。
2人を出会わせたのは通称マリで、マリはポルポトが好きなら誰にでもすぐ話しかけて、その日の打ち上げにも私とアヤを誘った。実際私も初めて「ライブの打ち上げ」に行き、そこで初めて「打ち上げ」に来たアヤと知り合ったのだ。
実はマリともその日に知り合ったんだけど。たしかマリはポルポトの臼田さんの隣の席を陣取っていた。
その後マリに誘われて、わたしたちは三人でライブに行くことが増え、同時にマリの紹介でライブハウスでの知り合いも増えていった。
マリが三人でイベントを組もうと提案したのは、その3ヶ月後だった。
場所はケーディーハポン、イベント名は「先だってのお返事は…vol1」
それぞれの好きなバンドを誘おう、そしてごちゃまぜなイベントでどこにもないようなイベント。
そういう事をマリはすぐ言い出すけれど、アヤもわたしも賛成した、内定が決まった一週間後だったこともある。
11月に組んだイベントには、、、すぐに思い出せないので当時のチラシを引き出して見た。
忘れてたけどポルポト臼田さんがVJ、マリの選んだBGM、出演バンドはイグノラムス・イグノラビムス、北内たまさん、闇米づくり、そしてカーリーズだった。
カーリーズはアヤが誘ったバンドだけど、その日一番私たちを釘付けにしたバンドだった。
私たちには一人一人記憶のずっと向こう、、小さい頃に置いてけぼりにしたシーソーの相手の女の子がいて、でもわたし達はみんな、彼女のことはそのまま忘れてしまったり、もう帰っていいよとだけ伝えて済ましてしまうのだ。カーリーズはそんな置いてけぼりになった女の子たちをずっと忘れないであやしててくれるような、そんあ音楽だった。
アヤからの結婚報告に慶んだり謹んだりしながら祝福のメールを返すと、私はふと思い出して、唯一持ってるレコードをかけた。正確にはダウンロードコードから落とした音源なんだけど。カーリーズのbaby blue。
そういえば、実はカーリーズをイベントにお誘いする際に、アヤと私も一緒にカーリーさんに会いに行った。実際のところ、どうもカーリーズのライブがおやすみ期間だったので、別ユニットを見にいったのだけど。カーリーさんはその日ピーターフォークというユニットで演奏していて、私が唯一みたピーターフォークのライブだった。(場所もこのちょうどケーディーハポン。)
その時にCDRを買っていたんだった、当時はアヤと2人で何度も聞き返して、歌詞も覚えていたんだけど。あのCDRはどこにいったんだろう。
カーリーズの事をツイッターで検索すると、ピーターフォークのライブ情報が載っていた。
その場の気持ちでなんとなくライブにきてしまった、という次第。
ギターの人のMCが長い。
二曲前の口笛の曲から知らない曲だ。
もう、懐かしい気持ちもないなぁ。と思い始める。
でも真ん前に座っちゃったし、いま帰れないし。
ギターの人のMCが終わるのかな。
あと二曲だけならきこうかな。
「唄を形に残すことはなんとなく自分は向いていないと思ってヤキモキしていましたが、やっぱり残したい曲出来ました。なので残しました。その二曲で終わるので聞いていって欲しいです。」
「魚の形をした醤油差しが海に潜ると言う曲です。ランチャーム、と言う曲です。魚の形をした醤油差しは魚の形をしているのに、魚に醤油をささなきゃいけないなんてかわいそうですよね。」
耐えきれず、私は立ち上がった。
「やめてください!
私たちは、私どもの、、いえ、我が社の商品はそんな事はしません!」
会場は静まり返ってしまった。
すると、表情を五分前から変えないカーリーさんはわたしに初めて顔を向けた。
「そうね、私もそうだと思うの」
そうして顔をピアノに向けると、音楽は始まる。
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