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猫を弔う

その日は土曜日にしては珍しく友人と会うことができたので、彼を駐車場へ送っていくころには外が真っ暗になる程度に楽しい1日を送っていました。

 

男2人で家ですることは色々な形式があるでしょうが、普段からやりとりをしているせいか、すんなり映画を観始めました。

観終わってすぐに面と向かって感想言いあう時間が恥ずかしいから、シュワちゃんの映画しかないと思い、10分ほど悩み2人とも観たことないシュワちゃんの映画を選びました。

駄作でした。ちょっとあまりにひどい。シュワちゃんで楽しめないことあるのか?ショックで、食べ終わったタルトの皿もそのままにコンビニへアイスを買いに行きました。とにかく謎のダンスシーンの長尺ぶり、あれをなくせば30分は短縮できたのではないか?仲間のメガネ男が死んだ時点で面白い部分が何もなかった。など、寡黙な2人にめずらしく、終わってすぐに感想を言い合っていたので、アイスは結構溶けてしまいました。

そうこうしているうちに夕方になり、2人で駅までカーリーさんを迎えに行き、解凍した小籠包を食べ、会社で犬とか飼えないかな、そしたら絶対出社する、動物と毎日過ごせたら幸せだなとか話したりして、外が真っ暗になった頃に友人を駐車場まで送ることになりました。

 

道の途中では3人ともポツポツとよくわからないことを言ったり、シュワちゃんの映画の説明をしたりしました。僕たちが住んでいるあたりは道が狭く、電灯も少ないため、夜道はわりと暗いのです。そのくせ、大きな工場や高速道路の入り口も近くにあるため、道幅に似合わず車通りが多く、夜道は少し心配です。

だから目が悪い3人が、今朝までそこになかった道路のシミが黒猫だと気付いたのは本当に同じタイミングでした。

 

「え。」のあとに口から出た言葉がみんなバラバラだったのは、「寝ているだけか?」「目が光った?」「動かない」とバラバラの考えが同時に起きるあの瞬間が、みんなそれぞれに起きていて、みんながそれぞれの言葉を担当しただけだったような気がします。

立ち止まった僕たちは、目が動いた気がするね、ここはよく猫が寝ているから・・・、と相槌を打ち、すこし辺りを見回して、そのままあと3分程にある駐車場まで歩きだすことにしました。

みんな考えがまとまらないまま歩いてる感じで、ときどき後ろからカーライトを浴びるたび、振り返り、車が中央を避けて走っているのを確認してまた歩き出しました。

 

駐車場に着くと、ネコ大丈夫かな、と誰かがいったような誰もが言ったような感じで、友人は車を乗り、僕たちは今日ありがとう、気をつけてねと彼を送り出しました。

 

彼を送り出した僕は、昭和の映画みたいな話ですがポッケに手を突っ込んで大股に歩くだけで少し気が強くなっていくような気がして、同じ道で戻らない方が間違っているような気がしました。たぶんカーリーさんも心配で同じ道を帰りたかったような気がします。

でも確認して死んでいたらどうすればいいのかわからないまま歩き出してたのだから、自分のだらしなさが久々に感じられました。坂道の真ん中で横たわる猫が、登り坂ではキラリと光る目とあうことがあっても、下り坂ではそんなことはありません。確かに死んでいることを確認しました。

 

携帯を片手にその場でネットを2人で調べると、市の清掃係が回収してくれること、既に定時は過ぎていること、道路救急係みたいな機関があることが判明し、報告体験記のまとめサイトもあり、その道路救急係に電話してみました。

電話する前からそうだろうなと思いましたが、道路救急係の人はおもに高速やら道路の応急措置なので、結局は市の清掃係にあした間違いなく連絡してくれると約束して終わりました。

それでもとても丁寧に居場所、時間、ネコの特徴、僕の連絡先、を記録してくれて、今後の流れも説明してくれました。

道路救急係の人にとって、猫の死体の連絡はどんなものなんでしょうか。本来の仕事とあまり関係がないのに、嫌な話を聞かされている時間だと思うのですが、やれやれと思うことがあると思うのですが、それでも真摯に対応してくれました。

 

電話を切ると、僕たちは一層真っ暗になった夜の真ん中で横たわった猫がより一層はっきり見えるようになってきました。

 

とにかく明日以降、市の清掃係がきてくれるまでにこれ以上轢かれることのないように道路脇に避けてあげたいのですが、足では絶対にやってはいけない気がするし、手で触るのはたとえ心がそれしかないと思っていても、どのくらい時間が経っているか考えると自分だけでなく家族含め危険な気がしてきました。

辺りに棒もなく、家に帰ったところで何があるか正直思いつきませんでした。離れて色々探している間にも何台か車は通っていたのですが、ちゃんと気付いて避けているので、これは仕方がないのかなと思って、長い間2人で手を合わせて、ごめんと念じることにしました。

 

帰り道に自動車とすれ違うたび振り返ってみて、車が避けていることを確認し、そういえばあの家の前は色んな猫のたまり場になっているし、白黒の猫もいたね。それか飼っている猫の友達かな、とか話していると、僕たちの5m先を白黒の猫が横断しました。猫は僕たちと目が合うとその場に座り込み、じっとしています。30秒目を合わせ、気を付けろよ、とだけ残して家に帰りました。風呂に入り、布団に入る頃には隣家の犬がわんわん吠えていました。

 

4日たった今朝、家族のLINEグループに、実家で2週間だけ猫を預かっていると言う話が挙がりました。

猫を飼ってる長兄夫婦と、飼育経験もあり保護猫を飼ってもらうためのグッズをつくってる次兄が、「うらやましいな、仲良くしてあげてね」と声をかけています。母は、「猫を預かるのは初めてなのでドキドキするな。」と言っています。

2週間と言う短い期間だけど、兄たちは世話のコツやアドバイスをしてくれると思います。 なぜか僕まで心強い気持ちになりました。

 



僕が言いたいのはつまり、そこに猫でも犬でも人でもいるならば、生きている間たった数秒でも共有する時間があるならば、あなたが出来る歓待をしてあげて欲しいし、僕はそうしていけたらいいなと思うんです。マンションだから飼うことはできないですけど。

朝から家族の和気藹々とした明るいLINEで泣きました。この日記は消すかもしれません。